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Strong Federationsの概要

Blockstreamが今年に入って公開したStrong Federationsのホワイトペーパーに記載されている技術仕様についてを読んでみた↓

https://arxiv.org/pdf/1612.05491v2.pdf

もともとBlockstreamのサイドチェーンのホワイトペーパーのFederated Pegでは、信頼できる連合の職員がメインチェーンとサイドチェーン間のコインのロック/アンロックをする構成になっている↓

techmedia-think.hatenablog.com

Strong Federationというのは、このFederated Pegに加えて、Federated Blocksigningという仕組みを追加で定義した内容みたい。

Federated Pegの流れ

Federated Pegの基本的な流れが↓

  1. ユーザーは自分のアセットをメインチェーン上で特殊なアドレス宛に送付する。このアドレスはサイドチェーンがアセットが返却されたと通知されるまでアセットをロックしておくよう設計されている。
  2. ユーザーはFederated Pegのinチャネルを使って、メインチェーンでアセットが凍結されていることを示す情報をサイドチェーンに埋め込み、サイドチェーン上でそのアセットを利用できるよう要求する。
  3. ユーザーがメインチェーンでロックしたアセットと等価なサイドチェーン上のアセットがアンロックもしくは新規作成され、ユーザーはそのアセットを持ってサイドチェーンに参加できるようになる。
  4. ユーザーがサイドチェーン上のアセットもしくはアセットの一部をoutチャネルを介してメインチェーン上に戻したい場合は、メインチェーン上の出力情報をサイドチェーンに埋め込む。
  5. Strong Federationが合意すると、Federated Pegはサイドチェーンで示された数量分、メインチェーン上のアセットの凍結を解除する。

Strong Federationを使ったサイドチェーンの改善

Bitcoinにおいては、ブロックへの署名=マイナーと呼ばれる署名者のセットを使った動的メンバーシップマルチパーティ署名と捉えることができる。ただBitcoinの場合(10分という)レイテンシーの問題があり、Federated Pegのモデルでは、この動的メンバーシップマルチパーティ署名の部分を、固定メンバーによるマルチシグで代替してサイドチェーン側のブロックの署名(ブロックの作成)をしている。

Strong Federationというのは、連合のメンバーがメインチェーンとサイドチェーンの間のプロトコルアダプタとして機能するようフェデレーションされたサイドチェーンで、以下の特徴がある。

  • 第三者の許可を必要とせずにチェーン間の資金移動が可能
  • フェデレーションが失敗した場合にはメインチェーン上に資金を戻す仕組みがある

連合のメンバーも、ユーザーの資金を直接コントロールすることはできない。

Strong Federationのネットワークオペレーターは、2種類の職員から構成されている。職員というのは、特定の条件が満たされた場合に定義された操作を機会的に実行するエンティティのこと。セキュリティ強化のため、特定の操作は複数のエンティティ間で分担され、あるエンティティが攻撃されてもその損害を限定的にできるように設計されている。Strong Federationでは、職員がブロックチェーン間のアセットの移動のコントロールとサイドチェーン側のコンセンサスルールの実行権限を持っている。この職員は以下の2種類に分けられる。

この2つのコンポーネントは独立していてもいい。Blocksignerはブロックチェーンのコンセンサスを生成し、サイドチェーンの台帳を作っていく。Watchmenブロックチェーン間でアセットを移動するときだけオンラインになればいい。(極端な例では1日1回オンラインになって、溜まったアセットの移動要求を処理するのでも良い)

Strong Federationsの技術要素

Strong Federationをサポートするには、Federated PegとFederated Blocksigningの2つのタイプのフェデレーションを開発する必要がある。

Federated Peg

サイドチェーンのホワイトペーパーでは、Bitcoinのコンセンサスルールを変更することなく、サイドチェーンを展開する方法について提案されている。ホワイトペーパーでは、サイドチェーンは5人のうち3人の職員が同意してブロックへの署名・検証、ペグを行うモデルになっていた。

Federated Pegは職員を使って2つのチェーン間でアセットを移動する仕組み。職員は少なくとも2つのチェーンを監視し、チェーン間のアセットの転送を検証する。Strong Federationの基準を満たすため、地理的及び管轄的に分散されたサーバを使用して職員のネットワークは作られる。

Federated Pegのメンバーは、Bitcoinとサイドチェーンのノードを実行するセキュアなサーバーと、クロスチェーンのトランザクションを作成、管理するソフトウェアを操作する。各サーバは暗号鍵とその署名を管理するハードウェアセキュリティモジュールを持つ。モジュールの仕事は、主にネットワークのセキュリティを守ることで、compromiseを検知すると全ての鍵を削除し、設計通りネットワークをフリーズさせる。1人もしくは少数の職員が攻撃された場合でも、その耐タンパー性のあるハードウェアに侵入されていても、他の職員に影響が無ければシステムは影響を受けない。federated pegのシステムを改竄するためには、主要なBlocksignerWatchmenのcompromiseが必要になる。それでもブロックチェーンのデータはノード間で常に共有されているため、すぐに改竄は発覚する。不適合なブロックが公開されるとすぐにBlocksignerの過半数がcompromiseであることが分かる。過半数Watchmen が安全であれば、サイドチェーン上のアセットがありながらメインチェーン上でアンロックされれることはない。

ビザンチン耐性

Bitcoinのマイニングスキームの最も重要な点の1つとしてビザンチン耐性が挙げられる。悪意あるマイナーが過半数を超えない限り、履歴の改竄やトランザクションの削除などは行えない。

Bitcoinは、全てのマイナーが平等な立場で参加でき、大多数のハッシュパワーに裏付けされたチェーンの有効性によってこれを実現している。過半数のハッシュパワーを持たない攻撃者は履歴を書き換えることはできず、計算リソースを投入しても無駄になる。これによりマイナーに正直な多数派に加わることを促し、攻撃者の負担を大きくしている。しかしこの仕組みでも、10分に1度のブロック生成でネットワークの遅延によりチェーンの一時的なフォークが発生し、チェーンの再編成リスクは残る。

Strong Federationsにおけるコンセンサス

職員の経済的な利益と連合の正しい機能と一致させることが重要で、重要な価値を持つ商業的なサイドチェーンをサポートするのにボランティアの無作為な組み合わせに頼るのは明らかに間違いだろう。フェデレーションは各参加者がフェデレーションによって保持されているのと同程度の価値を持つ場合に最も安全になる。これはビジネスでよく見られるパターンで、インセンティブはエスクロー、機能的な配分または保証債権や保険証券などの外部の法的構成物を通じて調整できる。

Strong FederationsにおけるBlocksigning

Strong Federationsでは、低レイテンシーの実現と、特定の敵対する少数派によるチェーンの再編成リスクを回避するためBitcoinにおける動的なマイナーセットを固定の署名者のセットに置き換える。プライベートチェーンと同様PoWは、スクリプトの検証に置き換えられる。連合ではこのスクリプトk-of-n のマルチシグネチャスキームで実装する。このスキームでは、ブロックの署名に個の鍵の内のk個の署名を必要とする。このようにしてBitcoinビザンチン耐性をエミュレートすることができ、悪意ある署名者が少数の内はシステムに影響を与えることはない。

以下のFig4が、Strong Federationsにおけるコンセンサスの流れ

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で、以下のフェーズで構成される。

  1. ブロック候補を作成するBlocksignerはラウンドロビンで決まる。ラウンドロビンでマスターとなったBlocksignerは候補ブロックを作成して他のBlocksignerに提案する。
  2. マスターではないBlocksignerは、受信した候補ブロックに賛成する意思表示を行う。
  3. 閾値Xを満たす場合、各Blocksignerはブロックに署名する。
  4. 閾値Yを満たす場合、ブロックは受け入れられ、ネットワークにブロードキャストされる。
  5. 次のブロックは、ラウンドロビンで次のBlocksignerにより提案される。
セキュリティの改善

Bitcoinではブロックの生成は確率的に行われるため、最近のブロックではチェーンの再編成の傾向がある。Strong Federationのブロックの生成は確率的ではなく、固定された一連の署名者によって行われるため、決して再編成されることはない。これによりトランザクションの確認に要する時間はだいぶ短縮される。

ビザンチン耐性は、2つの一般的なケースの攻撃に対する保護になる。1つはノードのクリティカルな部分がネットワークから分離され可用性が失われるケース。もう1つは攻撃者による多数のノードが操作され、完全性が失われるケース。

Strong FederationのBlocksigningは、最大2k − n − 1の攻撃者に対して堅牢である。つまり2k − nビザンチン攻撃者だけが競合する同じブロック高のブロックに署名し、ネットワークをフォークすることができる。例えば、5-of-8閾値の場合は1人の攻撃者に対するビザンチン耐性があり、6-of-8の場合は3人の攻撃者に対するビザンチン耐性がある。

一方、n − k + 1の署名者が署名に失敗すると、ブロックは生成されない。従って閾値kを増やすとフォークに対する保護は強化されるが、署名者が署名できない場合のネットワークの復元力は低下する。

所感

  • PoWを固定した署名者のセットを使ったマルチシグに置き換えて、悪意ある署名者が少数であればビザンチン耐性があるみたいな解釈は成り立つの?固定してる時点permittedなんじゃないの?と思ってしまう。
  • LiquidがこのStrong Federationsを最初に採用したプロダクトになるみたいね。
    blockstream.com